セイサンカガクケンキュウジョ

真夏に一つの「終わり」を確かめに行った

都心のど真ん中に某大学の研究施設

ギラギラと照りつける太陽が恨めしくも思える

…そんな日

まるで夏休みに忘れ物を取りに来た生徒のように

いとも簡単に建物に内包される

夏休みの学校の臭い…

整然と静まりかえった廊下に

記憶の中の制服を着た自分が

紺色のスカートを翻し走り抜けていく

渡り廊下から見える景色はボンヤリして

全ての輪郭を失う

ここはとても暑い…

長い廊下を渡って

迷子の生徒は何処へ向かうのか…?

果てしなく続くように連なる個室の研究室

そのドアがどれも少しずつ開いていて

部屋が呼吸をしているような気がした

各部屋にはなにやら怪しい機材が残されていて

さっきまでの懐かしい学校の雰囲気は

次第に薄れてくる

怪しい実験室…

同じ部屋に備え付けてある洗面台を覗いたら

静かに横たわるものを発見した

蟷螂の寿命はわからないけど

この広い敷地の原っぱで生まれて

この建物の終わりと時を同じくして

静かに眠りに入ったのだろう…

棺にしては贅沢なくらい大きな建物と共に

葬られるのを待っている

死は平等に訪れる…生き物にも建物にも…

でもそれは悲しいことなんかじゃない

いままで繰り返されてきたごく当たり前の出来事

センチな気持ちを振り払うように

実験室を後にしてグングン階段を上る

どこからか風が降りてくる

風に誘われるまま階段を上り詰めると

屋上へたどりついた

割れたガラスから風が強く吹き込む

すぐ隣には現実世界が口を開けていた

一歩足を踏み出せば大好きな東京タワー

どっちが虚構の世界なのだろう…

このエアポケットと

あれから一月後に同じ場所を訪ねると

すでに工事が始まっていた

当時あの辺り一帯は

六本木ヒルズ開発の真っ最中だった

この蟷螂の巨大棺桶も今はもう亡い…

2002.8.15 初出

2006.9.14 加筆修正

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