夜の子供達

最初に彼らに出逢ったのは家の屋根裏での雨宿りの足音

小さな居酒屋の横 古い駄菓子屋の前

車4台分ほどの小さな駐車場が彼らの現在の勤め先だ

夕暮れ時となるとどっからともなく現れ

車の下に身を潜め夜を明かす

最初は兄弟もたくさんいた

いつのまにやら3兄弟になった

好奇心旺盛で一番チビのキジ 

臆病で繊細なチャトラ 

長男のミルクティ色のピョン吉 

開店前の居酒屋のおやじに声を掛けられ

学校帰りの学生たちのおこぼれを貰える

ここにいれば いいこともある

会社帰りのサラリーマンが自転車止めて優しく呼びかけるけど知らん顔

オバチャンらの立ち話に飽き飽きしながら

用心深く耳を澄ます生活

小さな脳みそに渦巻くのは「生きる」という本能

彼らの母は「星の王子様」に出てくるキツネのように

飼い慣らされることの寂しさを知っていたのだろうか?

たったひとつのバラの花にはなれないことを

食うだけ食ったら

手を伸ばしても瞬時に上手にくるりと身をかわす

決して触れることのできない魂

彼らは夜に潜み夜に身を委ねる

その日も夜に潜む彼らに逢いに行った

居酒屋から出てくるほろ酔いの常連客を避けて進むと

夜道の真ん中に見覚えのある塊が目に付いた

イヤな予感がした

足早に駆け寄ると血の海の中

内臓を露わにしたチャトラが横たわっていた

これ以上の惨劇にならないよう

なんとか亡骸を引いて道の端に寄せるのが精一杯だった

まだほんのり暖かったと旦那が言った

私は泣くことしか出来なかった

いつもの車の下で兄弟が彼の死を静かに見つめていた

..................................................

次の日の朝は雨

チャトラの亡骸は跡形もなく消えていた

そして雨が彼の「生きた」痕跡を洗い流してしまった

...................................................

そして

今日も彼らに逢いに行く

決して触れられない魂に

駐車場に2匹の影が揺れる

その孤高の魂が夜に消えないことを祈って

2006.09

SEO 無料レンタルサーバー ブログ blog